私を知っているクライマーに「きゃりーの得意系は?」と聞いたら、
みんなが口を揃えてこう言うでしょう。
「スラブ・垂壁・バランス系」
最近は苦手克服のためにルーフも強傾斜も取り組んでいるので
得意と不得意のグレード差は縮んできたんですが、
それでもスラブ・垂壁は初段〜2級が1day(1日のうちに登り切れる)の限界グレードに対して、その他の傾斜は2〜3級になってしまいます。
ちなみに私のRP2段というのは垂壁の課題だし、ジムでのRPもスラブの初段です。
この場合の得意って、才能とかじゃなく、
どう動けばよいか他のことよりも分かってるっていう状態だと思うんです。
それはこれまでいろんな課題に出会って試行錯誤した結果だと思っています。
得意な系統の課題の方が相対的に完登数が多くなりますしね。
スラブってどんな壁?
スラブとは垂直よりも奥に倒れている壁のことを言います。
クライミングの経験がない方から見ると、「一番登りやすそうな壁」です。
実際、スラブに大きく出っ張ったホールドを付けると、かなり登りやすいです。
初めてボルダリングをする子供でも登れちゃいます。
しかし、高グレード課題になると、つかみどころのない薄くて小さいホールドばかりで、
バランスを保つのが大変だったり、フットワークがかなり重要になってきます。
ほかの壁とは登り方のコツがかなり異なるため、
オーバーハングが得意なクライマーの中にはスラブに苦手意識がある人も少なくありません。
ちなみに、某男子日本代表は
「クライミングの種類としてはボルダリング、リード、スピード、スラブってくらい登り方が違う」
って言ってました。
ちょ、私がやってたのってボルダリングじゃなくて「スラブ」だったの!?
スラブの魅力
巷にはオーバーハング大好きクライマーが多く、
SNSには彼らの登った派手でかっこいい課題の動画が溢れています。
対して、スラブを愛する通称「スラバー」はなんか地味。
壁や岩にぴったりくっついてヨジヨジ。ちょっとトカゲっぽい。
そして何より、オーバーハングと違い
落ちた時にホールドにぶつかったり、体を擦るリスクも高いです。
ただその反面、魅力がたっぷりあるのがスラブ!!
スLOVE!!!
集中力が研ぎ澄まされる
私はこれが一番の魅力だと思っています。
スラブはとっても集中力が必要な傾斜です。
足を踏みかえるにしても、次の一手を伸ばすときにしても、
一瞬でも集中力を欠くと次の瞬間マットに突き刺さることになるからです。
そんな研ぎ澄まされた状態になるので、
たとえ仕事で嫌なことがあっても、心が強制リセットされてしまう。
すべてを忘れて没頭させてくれるのがスラブの魅力です。
フットワークが上達する
細かいフットホールドを掻き込む、ハイステップで立ちこむ、片足でバランスをとる…
これらはスラブで必要不可欠なフットワークですが、
なんだかんだ、フットワークってスラブ以外の傾斜でも超重要です。
スラブ以外でもリーチがぎりぎりの課題は特に、
つま先に力を入れて体を目いっぱい伸ばすことができたら足を切らなくても良いときがあります。
そんな時はスラブでフットワークを練習してみてはいかがでしょうか?
スラブは足にかかる荷重が他の傾斜よりも大きいため、
フットワークがより重要になります。
つまり、スラブを制する者はフットワークを制するのです!
筋肉が少なくても登れる
オーバーハング大好きっ子はだいたい筋骨隆々。屈強な猛者どもです。
そんな猛者どもに非力なクライマーがジャイアントキリングできる夢の舞台…
そう、それがスラブです。
先ほどスラブは他の壁より足に荷重がかかると言いました。
私たちは日常生活で立って歩いているわけですから、
自重を支えるだけの筋力はすでに備わっているんです。
あとはバランスをとって登るコツさえ押さえたら
いつもは全然敵わなくて苦汁を飲まされているあの屈強なクライマーたちに
「お先っす!」
と言えちゃうわけです。
スラブのコツ
スラブを登るときは、保持よりも壁や岩の中でバランスを保つことが最も重要になります。
ぶっちゃけ、手を放していても足だけでバランスがとれるならそれでいいんです。
ほかの傾斜と違って、「腕はこうすると力が入る」とか「背中の筋肉を使って保持する」とか考えないでください。まじで。
バランス
スラブはバランスゲームです。
バランスをとるときに大事なのが「重心をどこに置くか」ということ。
基本は体を壁に近づけ、重心を壁の近くに置きますが、手のホールドが持ちやすい時はそれが一番じゃないこともあります。
重心を置く位置が壁の近くなのか、少し離れた方がいいのか。右側なのか、左側なのか、真ん中なのか、上か、下か。これを見極めます。
どうしたらいいかわからない場合は1つずつ試してみましょう。
バランスを保てる場所が見つかるはずです。
重心移動
バランスをとったら動き出しましょう。
動き出すときも、重心は常に意識します。
上の図は、よくあるスラブの動きの重心移動イメージです。
上に行ってから左に行くか、まっすぐ左上に行くか、左に行ってから上に行くか、これだけなんですが試してみると動きやすさが変わります。
①は、右手が持ちやすくて足が不安なホールドの場合。
右側に重心を置き、右手のホールドを下に引きます。
左足は立ち上がるようなイメージで伸ばします。
②は、右手と左足どちらも均等に力を入れた方がバランスがとりやすい場合です。
斜め上に行くイメージで取りに行きます。
デッドするときもこの軌道で行きます。
③は、右手のホールドが持ちにくく、左足のフットホールドが良い場合。
右手のホールドを右側に押しながら一旦左足にしゃがみ込みます。
かかとの上にお尻を置くイメージです。
その後、バランスを取りながら左足でゆっくり立ち上がります。
立ち上がる時はかかとを上げて膝を下げると足に力が入りやすくなります。
ちなみに、③が一番リーチを出せるので、次のホールドが遠いときはおススメ。
手を返して右のホールドをプッシュすると、ギリギリまでリーチを伸ばせます。
足の置き方
スラブのフットホールドはだいたい細かいか、なだらかか、細かくてなだらかかのどれかです。
足はピンポイントに置くことを心がけましょう。
一番ホールドの厚みがあるところや、傾斜がなだらかなところに親指のつま先を乗せるイメージです。
薄く小さいホールドはインフロント(親指側)で踏みます。イメージはがに股。
乗りにくい場合は、シューズのエッジを壁に擦りつけながらホールドに乗せましょう。
一方、
厚みがあるけどなだらかなホールドは、ホールドの傾斜に対してつま先を垂直に当てると乗りやすいです。
つま先全体で踏むので接地面が大きくなり摩擦の力が増しますし、足の向きが骨盤に対しても垂直になる場合はより足に力が入りやすくなります。
かかとは上げる時もあれば、下げることもあります。
極小ホールドに乗るときは、かかとを上げて足裏全体に力を入れることが多く、
スメアリングで立っているときはリラックスして下げ気味にした方が乗りやすいこともしばしば。
立ち込んだら膝は伸ばし、腰をグッと入れると、骨盤が足の上に乗っかって安定します。
フットホールドの踏み替え(足の入れ替え)
足の入れ替えはバランスをとって慎重に行います。
基本は、手を左右に広げます。
一輪車とか、やじろべえとか、綱渡りとかを連想すると分かりやすいと思いますが、
手は体から離した方が圧倒的にバランスがとりやすいです。
バランスをとって左右の足をピンポイントで重ねられたら、最小限の動きで下の足を素早く引き抜きます。
じりじり入れ替えるときは、左右のつま先をぴったり合わせてスライドさせます。
ホールディング(ホールドの持ち方)
ホールドの持ち方は、
スローパーをカチっても、ガチャ持ちしても、親指だけで支えても、アンダーを下引きで持っても全く構いません!
自分が一番バランスが取れる、一番力を入れられる、そんなホールディングでOKです。
ちなみに私はスローパーをカチるタイプのスラバーです
柔軟性
柔軟性ってどの壁でも大事ですよね。
でも、強傾斜の手にヒールとかは、腕力があって体を引き上げられれば意外と苦じゃない。
でもスラブは腕力に頼らない傾斜だからこそ、関節の柔らかさの差が如実に出ます。
体の硬い5段クライマーがスラブの3級に苦戦して、
「これ初段くらいあるぞ…」
ってつぶやいたのを私は聞き逃しませんでしたよ…フフフ
左右開脚はもちろん、足を前後に開いてランジスクワットのような形で手に足することも多いので、
最低限、股関節と腸腰筋、足首はストレッチしておきましょう!
メンタル
結構スラブはメンタル面が重要な気がしています。
「私が踏めてるっていうんだから確実に踏めてる!」
って信じ込んでください。
最後はこれが大事。
まとめ スラブを登ろう!
ここまで読んで、皆さんが少しでもスラブを登ってみたくなったら嬉しいです。
私はもしかしたらコツを教えてしまったことで屈強なクライマーたちにスラブでも負けてしまうことになるかもしれませんが…(笑)
ま、でもクライミングって結局自分との戦いですからね!←
みんなでわいわい楽しくスラブを登りましょう~~~~♪
最後に、私からのお願いですw
お友達にスラバーがいたら、ちょっと優しくしてあげてください。
たまには岩でスラブの課題に付き合ってあげてください。
欲を言えばたまにでいいから一番最初にスラブの課題に連れて行ってあげてください(笑)
みんな、きゃりーとの約束だぞっっっ♡
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